くらしの中へ「小さな」しあわせを届けたい!カネコ小兵4代目伊藤祐輝さん

2022.11.22

くらしの中へ「小さな」しあわせを届けたい!カネコ小兵4代目伊藤祐輝さん アイキャッチ



創業100年を越える伝統的な美濃焼の老舗、カネコ小兵。
オリジナルブランドの「ぎやまん陶」「リンカ」を世に送り出し、海外からも高い評価を得ている窯元です。

今回は、カネコ小兵の4代目となる伊藤祐輝さんに、使い手のことを1番に考えるものづくりや、伝統を守りながら、SNSでの情報発信など新たなことにチャレンジする原動力やその想いを聞いてみました。




カネコ小兵の「ぎやまん陶」と「リンカ」はいかにして生まれたのか?

土岐市のふるさと納税返礼品にも選ばれている、代表的なブランド「ぎやまん陶」と「リンカ」。それぞれ全く異なる魅力を持っているシリーズですが、これらはどのようにして誕生したのでしょうか。





「まず、ぎやまん陶ですが、『漆のような質感を釉薬で出せないか?』との発想で、私の父である三代目社長が作った商品です。漆塗りの器のような光沢や質感を目指して、最初に完成したのがぎやまん陶の『漆ブラウン』というカラーでした。

そのときはまだ、ぎやまん陶という名前はなくて、少しずつ色を増やしていく段階で、透明なツヤ感がガラスのように見えたことがあったのです。そこから江戸時代にガラスを意味する『ぎやまん』が思い浮かび、『ぎやまん陶』と名付けました。

『リンカ』については、花びらをかたどった輪花皿(りんかざら)という伝統的なデザインがあり、その名称をカタカナにして名付けられました。陶器の土物っぽさを残して、手作り感を出しているのが特徴です。





カネコ小兵の製品は磁器なのですが、そもそも磁器はピシッとした強いデザインが多いです。それに対してリンカは、優しい色合いや丸みのあるデザインで、温かみを感じられるように仕上げています。

ぎやまん陶もリンカも、食洗器や電子レンジが使えることに驚かれます。日常的な使いやすさから多くの方に支持をいただいています」





チームで創り上げるカネコ小兵の美濃焼

土岐市の名産として古くから知られている美濃焼。
イオンモール土岐内にオープンした美濃焼のセレクトショップ「TOKI MINOYAKI」にも、数々の窯元の陶磁器が並んでいます。
この美濃焼ができるまでにはカネコ小兵のような窯元だけでなく、様々な職人たちの手によって支えられているのです。

「カネコ小兵のぎやまん陶やリンカを含めた製品は、カネコ小兵だけで作られているわけではありません。製品が完成するまでには、原料屋さんや釉薬屋さん、型屋さんなどたくさんの人の手を介しています。

昨年にはカネコ小兵創業100年の挑戦として『MINOIRO』という取り組みがありました。これは100色のバリエーションの中から、好きな色の美濃焼をお届けするプロジェクトです。





チームで創り上げるカネコ小兵の美濃焼

チームで創り上げるカネコ小兵の美濃焼

>>MINOIROプロジェクトについて




この100色は全て釉薬の微妙な配合によって作られていて、デザイナーさんや釉薬屋さんといろいろ相談しながら微妙な色やトーンの違いまで細かく表現しました。シンプルで使い勝手の良い美濃焼のコップやお皿などを選ぶことができ、とても好評をいただいてます。

このMINOIROはチームとして創り上げた代表例ですね。今ではカネコ小兵の大きな財産、宝物です」





定義が広すぎる美濃焼だからこそ彩り豊かな個性を

伝統的な産業である「美濃焼」。しかし美濃焼という名前が強すぎるがあまり、それぞれの窯元のブランドが認知されにくいという課題もあるようです。

「美濃焼は一大産業だからこそ窯元や作家のブランドが認知されにくいという課題があったんです。

『それではいけない』との思いを持っていた三代目の父が、ぎやまん陶やリンカというブランドを生み出し、これまで「美濃焼」としか知られていなかった器を、ブランドとして認知してもらえるよう努力を重ねてきました。

最近では、美濃焼をもっと知ってもらうために、釉薬のことや陶器と磁器の違いなどの『焼き物の基本』についてもYouTubeで発信しています。

料理を入れる器としてだけではなく、どのように焼き物が作られているのか、違いはどこで生まれているのかなど、焼き物を今よりも知ってもらえるようになれば、器というものを身近に感じてもらえるようになるんじゃないかな、と思っています」





お客さんの「好き」を身近で感じられた!自分で育てたモノを世に送りだせる喜び

「カネコ小兵の後を継ぐ」という選択肢を、幼い頃からあまり考えていなかったという伊藤さん。大学卒業後も、自動車の部品メーカーへ就職するなど、美濃焼とは距離を置いた生活を送っていました。そんな伊藤さんが四代目としてカネコ小兵への入社を決めた理由はなんだったのでしょう。

「陶器のイベントで、ぎやまん陶やリンカを販売することがあったんですが、『この色、好きなんだよね』とか『このお皿すごく気にいっちゃった』とか、喜んでもらっている声を間近で聞いたときに気持ちが動きました。

『焼き物っておもしろいな、こんなにも人の心を動かせる魅力があるんだな』と思いました。自分で育てたものを世に送り出せるってすごいことだと感じて、その価値をお客さんに直接届けられるところで仕事をしてみたいと思ったのです。

そこで父に『カネコ小兵に入社したい』と想いを伝えて今に至ります」





食器としての美濃焼は食卓を彩るためのツール そこに「小さな」しあわせを感じてくれたら

カネコ小兵で生産している美濃焼はお皿を中心とした食器です。「食」はライフスタイルを彩る要素の1つであり、その料理を入れるための器で食卓を飾ることは、暮らしをちょっとだけ豊かにしてくれるツールの1つです。

この器でカネコ小兵として今後目指していくこととは?

「美濃焼の多くは食べ物や飲み物を入れる『器』じゃないですか。世界中を見ても『食』っていう共通の大きなコンテンツです。その中で器ができるのは食を彩ること。

カネコ小兵の

私たちは、やきものづくりを通して
くらしの中へ「小さな」しあわせを届け、
楽しくて心地よい、
普段着の生活文化を創造します。

という企業理念をすごく大切にしています。

器で世界は変えられなくても、ちょっとした日常の1シーンが豊かになってくれたらと感じています。

カネコ小兵の器で会話が生まれたり、お料理の写真が綺麗に撮影できたり、それをまたSNSで投稿したり、いいねがついて嬉しい気持ちになったりと、そんな「小さな」しあわせのお役に立てたらすごく嬉しいです。

だから商売を大きくするというよりは、これまで通り地道にやっていくことが大切だと思っています。

自分たちのできるサイズ感で、器を使ってくれる人たちのことを第一に考えて一歩ずつ進んでいきたいですね」





カネコ小兵4代目 伊藤 祐輝 氏

カネコ小兵4代目 伊藤 祐輝